平和の礎

過去の風景から切り出されたかのような広大な地表面が、敷地の上に浮かべられる。
それは、幾筋もの土留めの壁によって帯状に分節され、波を打ってゆらめく。異なる波動の差がつくる断層に、戦没者24万人の刻銘板は、はめこまれる。平穏な風景の中に見え隠れする刻銘板は、私達の意識を一挙に歴史へと引き込むであろう。
戦後も半世紀程が既に経過した。傷の多くは、次の世代に正確には伝承されていない。しかし私達は日常の切れ目に、想像力の働きによって、歴史を見ることはできる。そのような、歴史の記憶を呼び覚ます媒介=装置として、この祈念碑空間の全体をとらえたい。